地方からでてきて十代で結婚した夫婦。建築業界で地道に働き、バブル経済の後押しもあって仕事は順調に成功していく。有限会社を興し、一軒家を購入し、高級車を複数所有する。子供は4人。1人は残念ながら障害を持って生まれたがそれでも家族の協力もありすくすくと育つ。次男は成績優秀で有名な私立へ入学する。絵に描いたようなサクセスストーリーである。
そしてバブル崩壊。影響をモロに受けた建設業界。同業者は次々と倒産、リストラ。バブルにのっていい加減な仕事をしていた業者が切られていく中で、真面目で質の高い仕事をしていたこの夫婦の会社は逆に受注が伸びっていった。もちろん、以前のように旨みがある仕事は減ってはいたが会社経営は順調だった。
ここまでが私が直接知っていた話。もともと私の友人が勤めていた会社の社長さんだったので、その友人と付き合いがなくなってからの数年は音信不通であったが、昨今はマンションブーム、リフォームブームでもあり、そのまま順調なのであろうと思っていた。
とある日。自宅の留守番電話にメッセージが1件。自宅電話などにくるのは勧誘くらいのものだ。とりあえず再生してみると覇気のない女性の声で、「もしもーし。」とだけ入っていた。聞き覚えがある気もするが、間違い電話であろうとそのまま消去する。それから1ヵ月後、久しぶりに友人と会う。お互いや身の回りの近況報告をしていて、その夫婦のその後の話を聞いた。
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